Q 先日、駐車場で交通事故に遭い、現在、むち打ちのような症状が出ています。事故直後に、加害者が人損扱いではなく、物損事故として扱ってほしいと強く言ってきました。その時は、大きなけがもないと思っていたため、それに応じても良いと考えましたが、家族にすぐに連絡をとり、きちんと報告することにしました。加害者は、どうして交通事故を物損事故扱いにしようとしたのでしょうか。
A 交通事故によって、怪我があったにもかかわらず、物損事故として扱ってほしいと頼む加害者は少なくないようです。
被害者は、交通事故の現場で、気持ちが動転していることが少なくなく、怪我がないまたは非常に軽いと思われるような場合、それに応じてしまうこともあるようです。
加害者が、人損事故を物損事故扱いにしてほしいとお願いする理由としてはいくつか考えられます。
人身事故の場合、「民事上の責任」(損害賠償)に加え、責任加害者の責任として、さらに「刑事上の責任」と「行政上の責任」とがあります。刑事処分は罰金、禁固や懲役等の刑事罰が加害者に科せられるという処分であり、行政処分は違反に応じた点数が加害者に加算されるという処分です。
物損事故扱いの場合には、刑事処分も行政処分もいずれの処分も受けませんので、物損事故扱いにしたほうが加害者にとっては非常に有利なのです。
なお、一旦、物損扱いにしてしまうと、その後、人損事故として扱わなかったことによる不利益(保険手続き上の不利益)等が生じる恐れがありますので、くれぐれも対応には注意が必要です。